シリア移民の幼児が溺死、写真が世界に衝撃

ギリシャに向かうシリア人を乗せた船が地中海のトルコ沿岸で沈没し、少なくとも12人が死亡した事件で、犠牲となった幼児が海岸でうつ伏せになって横たわる写真が多くの人に衝撃を与えている。

トルコの通信社が公開したこの写真は、ツイッターでハッシュタグ「#KiyiyaVuranInsanlik」と共に急速に広がっており、中東やアフリカから欧州を目指す大量の移民をめぐる問題で、犠牲の深刻さに対する国際的な懸念が高まっている。

今年に入り、欧州を目指し海を渡ろうとして死亡した移民の数は数千人にも及んでいる。

この記事中の写真には、ショッキングな内容が含まれています)

トルコの沿岸警備隊によると、移民たちを乗せた船2隻は、トルコのボドルム半島からギリシャのコス島を目指していたが、2日早朝に出航して間もなく沈没した。

子ども5人を含む12人の死亡が確認されており、2隻に乗船していた23人のうち9人が助かった。何人かは救命胴着で浜にたどり着いたという。2人が依然行方不明だが、生存の見込みは薄れつつある。

犠牲となった幼児が赤いTシャツを着たまま海岸にうつ伏せになって横たわる写真は、死体が浜に打ち上げられた2日の午前6時前後のすぐ後に公開されている。

動画説明, BBC's Fergal Keane reports on the death of two young boys, found drowned on a Turkish beach

<ビデオ>BBCのファーガル・キーン記者がシリア移民の幼児が溺死した事件をリポート。ビデオには衝撃的な映像が含まれます。

トルコのドアン通信によると、この幼児を含む移民たちは、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に包囲されたシリアのコバニから昨年トルコに逃れてきた。

写真の幼児は3歳のアイランくんで、母のリハンさん、5歳の兄ガリプくんと共に死亡。父親のアブドラ・クルディさんは助かった。

犠牲者を見た地元の漁師は「海に行って、怖かった。胸がつぶれる思いだ」と語った。

現地で取材するBBCのファーガル・キーン記者は、犠牲者が見つかった海岸は事件で急に知られるようになったが、通常の日でも、しぼんだゴムボートの一部や海を渡ろうとする移民が残した所持品など、困難な状況に置かれた人々の痕跡が海岸で見つかるという。

一部のメディアは犠牲となった幼児がはっきり写る写真を報じているが、BBCでは、警察官が遺体を抱える、幼児の顔などが写っていない一枚のみを記事に使用している。

トルコの通信社が公開した、警察官が犠牲となった幼児を運ぶ様子を写した写真

画像提供, AP

画像説明, トルコの通信社が公開した、警察官が犠牲となった幼児を運ぶ様子を写した写真(2日)

英紙インディペンデントは男の子がうつぶせて倒れている写真をウエブサイトで使用。理由として「『現在の移民危機』について色々な美辞麗句が使われるが、多くの難民が直面する切迫した状況の現実を見失うのはいともたやすい」と説明している。

ウェブ上では今回の事件に対する反響が広がっているものの、欧州の政治家の反応は限られている。

英労働党の党首選挙に出馬しているイベット・クーパー下院議員は公開された写真について、「われわれが(移民問題に)背を向けることはできない」ことを示している、と述べた。同議員は「船が転覆し、溺れる子どもを助けようと必死になっている母親がいる状況で(中略)英国が行動を起こす必要がある」と語った。